「ロック、オン………」



生きていた。
彼が、現実に生きていた。





今、俺のこの指先に居る。

太いチューブがつけられてはいるが、確かに彼自身の肺で呼吸しているのが、カプセル越しに分かる。

触れたい。彼に触れたい。



だが、カプセルを開けてはいけないことは分かっていた。

カプセル内には治療を促すために高濃度の酸素が注入されている。患部には自動で定期的に赤外線治療が施される。

こんな安物のカプセルでも、ないよりはずっとましだろう。

彼の治療を妨げるようなことは絶対したくない。
いや、絶対出来ない。

頭ではそう理解しているのに、僅かな距離を隔てるガラスケースがもどかしくて仕方がなかった。














爆発の衝撃で傷を負うより先に遠くまで吹き飛ばされたのだろうか。

空気抵抗のない宇宙では、一度推進力を得ると、減速する事はない。


そのことをふまえたうえで、エクシアでかなりの広範囲を探索したのだが、先に別の宇宙船に発見されていたのだろうか………。





ふと、彼の首筋に火傷のようなものがあるのに気がつく。

長袖のガウンのような病服で、彼身体全体があまり見えない。

あんな大爆発に巻き込まれたんだ、多少の火傷は当然負うだろう。



手足の先端も、カプセルの不透明な部分に隠されて、見ることは出来ない。



どこかに深い傷を負っていないだろうか。



荒っぽく注された点滴の針が憎らしい。

あまり良い治療は施されていないようだ。

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