結局医師と看護師は、No.1からNo.9の患者の点滴は省いたようだ。俺はカプセルの下で縮こまっり息を殺して奴らをやり過ごした。

気配が通路の向こうへ消えたあと、俺はもう一度ロックオンのカプセルを見た。
よく調べると、カプセルの点滴注入口に「No.12」 とある。




心臓が凍りつく感じがした。




もし、ロックオンの無意識状態があと少し続くようなら、きっと奴らはロックオンの点滴もケチるのだろう。

こんなに痩せこけているのに………
これ以上摂取カロリーを落とされたら、きっとロックオンは死んでしまう。

さらに弱っていくロックオンなんて、想像したくなかった。







それに、意識が回復したら、諜部から取り調べを受けることになるそうだ。

CBのメンバーは住民登録コードを持っていない。
戸籍上は死んだことになっている。


不審に思われ、厳しい取り調べを受けることになる。
今のロックオンにはその局面を切り抜けるだけの体力もないだろう。








カプセル内で弱々しく光を跳ね返す茶色の髪。

精悍さを失ってやせ痩けた青白い頬。

甘く優しい言葉を紡ぎ、眠る前には額に軽いキスをくれたその温かな唇は乾いてひび割れているようだ。


そして、重く綴じられた目蓋に隠されている双瞳。
右目蓋の傷痕は、くすんだ紫色に変色している。













やっと会えて嬉しいはずなのに、

生きていてくれて、飛び上がるほど喜ばしいはずなのに、


彼の変わり果てた姿を見ていると、悲しくて苦しい。
















何故、彼を発見したのが俺じゃなかったのだろう。

悔しさが募る。

あの時はただただ必死だったが、努力が足りなかったのだろうか。

もっと理性的に探索すれば、俺が彼を救出出来ていたのだろうか。















鼻の奥がツンと痛い。

あの日、さんざん泣いたはずなのに、まだ涙が出るなんて。





その時、滲んだ視界の先で、ロックオンの肺が静かに、だが確かに大きく動いた。


















ハッとして俺は身を起こす。



そうだ。泣いている場合じゃない。

彼は今、ここで生きている。

確かに今、順調とは言えないだろうが回復に向かっている。




こんな粗悪な治療環境に、彼を置いておけない。
なるべく早く、より良い環境に移動させなければ。










俺は行動を開始した。



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