*****




俺がソレスタルビーイングに入ったばかりの頃、俺は隠れ家の窓に掛かったカーテンの意味が分からなかった。



バスタオルを全部洗濯してしまった時には、その布切れをはずして使った。





「なんでこんなことしたんだよ、刹那。」



隠れ家の様子を見に来たロックオンが溜め息を吐く。



「………問題ない。」

「いやいや、問題大ありだ!普通、カーテンをタオルの代わりになんかしねーぞ?」




「………意味が分からない。」



「……は?」



「なぜ窓に布をつけるのか、意味が分からない。」



「………、そうか。」



ロックオンは、俺に呆れもせず、さげすみもせず、ただ頷いただけだった。


てっきり馬鹿にされるか呆れられると思っていた俺は、意外に思った。




それからロックオンは、辛抱強くカーテンの役割を教えてくれた。


防犯のためだとか、遮光・断熱のためだとか、たくさんのデザインがあることだとか………、

とにかく、いろいろ丁寧に教えてくれた。












「刹那の故郷では、カーテンは使わなかったんだろ?」



「……ああ。窓が小さかったから。」



「だろうな。」



ロックオンがまた頷く。



「俺は中東にはあまり行ったことがないが、あの地域の家の構造だと必要ないもんな。
カーテンの意味が分からなくて当然だ。」





彼は、笑いながら俺の頭をかき混ぜた。


彼はまっすぐ受け止めてくれた。

俺を、認めてくれた。















「……ロックオン。」


「ん?何だ、刹那。」


「……あんたの国では、カーテンをしたのか?」


「ああ、してたぜ。真昼に読書する時はいつもカーテン引いてたな。」




懐かしそうに彼は目を細めた。


俺には、彼が窓辺で読書する姿が容易に想像できた。











暖かい真昼の風で揺れるカーテン。

彼はページの上の住人だ。


髪は漏れた日の光でキャラメル色に透けていて、彼は長い白い指でそれを耳にかける。


無意識にコーヒーに手が伸びる。

あっ、とカップを落としそうになって、慌ててこちらの世界に戻ってくる……。












「……綺麗だろうな。」


「ん?……ああ。書斎は丸太造りでな、緑のカーテンが栄えて綺麗だった。」




……違う、俺が綺麗だと言ったのは、カーテンのことじゃなくて……




「そうだ、刹那。」


彼がポンと手を叩いた。


「今から、カーテン選びに行くか。」




「………別に俺は…、」

「そう言いなさんな。刹那は、青が好きだよな?」





お兄さんがエクシアカラーの部屋にしてやろう、と意気込んだ彼は、楽しそうだった。









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