最新型カプセルにロックオンを移してから3日経つ。 点滴も栄養価の高いものに替えたせいか、顔色は良いようだ。 痩せこけていた頬が、こころなしか少しだけふっくらしてきた気がする。 コロニーの病院のサーバーをハッキングして入手した、最新型カプセルの取り扱い説明書。 諸機能の細かい動作や、数百人のモニターの治療記録は、穴が空くほど読み込んだ。 ロックオンのように爆発に巻き込まれて1ヶ月以上経過してから治療を始めるケースも、数件記載されていた。 意識がない場合は、カプセルを最低5日は開けてはならない。 医療用カプセルの主な働きは、高濃度の酸素を送り込み、筋肉や内臓の自己治癒力を増強させること。 さらにこの最新型は、赤外線治療を全身に施せるようになっている。 皮膚の裂傷をふさぎ、新しい皮膚を生成するのを助ける機能だ。 これにより、酷い傷跡もほとんど残らず、完治するまでにかかる時間も従来の1/3しかかからないそうだ。 患者がカプセルに入っている間の点滴は、全て自動で行われる。 さらに、排泄、体の洗浄なども、自動のウォシュレットで、患部に負担をかけないように設定されている。 (だから、新しいカプセルに移されてからのロックオンは、非常に清潔で、顔色も良かった。) 24時間、排泄中も洗浄中も、カプセルの中にいれば常に最高の治療を受け続けられる。 1秒たりとも中断させず、治療を継続させることは、完治までの最良の近道だ。 とりあえず、5日以上の治療期間が絶対必要らしい。 5日間経過してから、ようやく彼に触れて全身の検診を行うことが出来る。 刹那は、悶々としていた。 ……ロックオンがすぐそばにいる。 死んだと思った彼が生きていて、この指の先で安らかに呼吸している。 なのに、カプセルを開けられない。 ガラスケースに阻まれて、彼に触れることができない。 同じ空気さえ吸えないことが悔しかった。 このカプセルが、彼の命を支えている、このガラスケースが彼の心臓の動きを守っている……。 それは、分かりきったことで、感謝すべき事実だ。 それなのに、彼と自分とを隔てるガラスケースが憎らしかった。 同時に、自分勝手な欲望で彼の治療の邪魔をしたいと思った自分自身に嫌気がさした。 あと2日待てば触れられるのに、それすら難しく感じてしまって、自己嫌悪に陥った。 「ロックオン、」 額をガラスケースに押し当てる。 「早く、目を覚ませ。」 ……そして、早くその翠碧を見せてくれ。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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