この家に入居して迎える4回目の朝。


この日、刹那は勢い良く目覚めた。

部屋の暖房を暖かめに調節し、洗面器に熱湯をはって部屋の湿度をあげる。



今日は、ロックオンがこのカプセルに入って5日目。

カプセルを開けてもいい日だ。



室内の環境を整えてから、隔てていたガラスケースを開ける。

この4日間、ずっと一緒に居たのに触れられなかった。
その分の気持ちが募って、思わず手が震える。



「………ロックオン、」


彼の頬に、そっと指で触れた。

治療の効果だろうか、コロニーにいた頃よりも、体温が高い気がする。


次いで、高い鼻、すっと通った鼻筋、癒えかけた傷跡が残る右瞼をなぞる。

刹那は、綺麗な茶髪をかき分けて、象牙のような額にキスを落とした。




…………温かい…………。

一度唇に触れてしまえば、堰を切ったように気持ちが溢れてきて。

額、目尻、頬、そして、薄い唇に自分のそれを押し当てた。


ロックオンの唇から、規則正しく漏れる呼気を感じると、嬉しさがこみ上げてくる。



「……ロックオン、生きていてくれて、ありがとう。」


そっと、もう一度唇を重ねる。


「だから、早く目を覚ましてくれ。」











*****





「……どうして王子様のキスで目覚めるの?」


「ハハハ、やっぱりフェルトは女の子だな〜。」


「……人口呼吸をすれば、生存率は上がる。」


「うわ〜、やっぱり刹那は、男の子だな……。」



トレミーで週に1度行われていた本の読み聞かせ講義。

講師はロックオン。
生徒はフェルトと俺。

動物モノの本の時は、なぜかアレルヤまで参加していた。


ロックオンは、俺達を子供扱いして、いつも絵本をチョイスした。

でも、白熱した演技のせいで飽きることはなかった。……時々白熱し過ぎてキモかったが。



「王子様の唇にはな、特別なパワーがあるんだ。」


「………嘘臭い。」


「そんなに言うなら、刹那、試してみる?」


「なっ!や、やめろ!……俺に触れるな!!」



フェルトはクスクスと笑うだけで、いつもロックオンを止めてはくれなかった。








*****






刹那がキスをしても、ロックオンは起きなかった。


「……どんなパワーか、聞いておけば良かった……。」






愚痴っても仕方ない。

ロックオンの全身の検診をしなければ。



ロックオンの体を抱え上げ、床に敷いたマットレスに寝かせる。


コロニーにいた頃よりは重く感じたが、それでも肩を負傷している刹那でも難なく抱え上げることができた。





マットレスに出してから、病服を脱がせる。

胸元の留め具を外して、薄い病服をそっとはだけさせた。






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