*****



トレミーに居た頃。


先に告白してきたのはロックオンだった。

いつになく真剣な表情で、俺の目をまっすぐ見つめていた。





8歳も年下で、しかも同性で。

こんなふうに恋情を抱くのはおかしいと、自分でも思う。

返事はいらない。

ただ、自分の気持ちを伝えたかったから。





それだけ言って去って行こうとした年上の青年を、俺はとっさに引き留めていた。



自分でも、自分の行動の意味が分からなかった。

ただ、最近彼に抱く気持ちが、ただの憧れではなくなってきていることには薄々気づいていた。

彼の碧翠の美しさを独り占めしたいと思うようになっていることに……。










結ばれた後、彼はたくさんの抱擁と口付けを俺にくれた。



武力介入が激化していく中、一度だけ彼から体を求められた。

何も知らない俺が怖い思いをしない為に、こちらが焦れったく感じるほど丹念な愛撫を施され、そして繋がった。


痛みが全くない訳ではなかった。
だが、身悶えするほどの快感と、彼と一つになれた喜びで、俺は満たされた。





誰が見ても惚れ惚れするギリシャ彫刻のようなしなやかな筋肉。

象牙のような白い肌。

分厚く温かい胸板が、ちっぽけな俺を抱きしめてくれる。

美しい彼の肉体が自分のものになったのが、とても誇らしかった。











*****








マットレスに横たわる、彼の裸体。




刹那は、あまりの変わり様に、ただ唖然とした。



象牙の肌はますます白く透き通っている。

しかし、大きな傷跡が、右肩から左の胸にかけて走っていた。

さらに、右のわき腹から背中に向かう細長い縫い跡。

右太ももには火傷のような大きな跡、さらに左足首にも縫合手術の跡が走っている。


どの傷跡も、カプセルの自己治癒能力増強治療のおかげか、癒えかけて薄紫に変色している。

他にもたくさんの小さなかさぶたが微かに残っていた。






今でこそカプセルの治療で癒えかけているが、彼が宇宙で発見された時はきっと血だらけだったに違いない。

生きているのか死んでいるのか分からないほどの重傷だったに違いない。

今ここで安らかに眠っているのが信じられないほどの。



刹那は、堪らなくなって彼の頭を抱きかかえた。

柔らかい茶髪を手で梳き、白い額にキスを落とす。

「生きていてくれて、本当にありがとう。」



ロックオンの白い頬に、ぽたり、と滴が垂れた。

その水滴を指で拭い取って初めて、刹那は自分が泣いていることに気づいた。










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