温かい蒸しタオルで、白い体を拭いていく。


寝たきりで1ヶ月以上栄養価の低い点滴を与え続けられたせいか、ロックオンは痩せこけていた。







綺麗な顔と白い首筋を丁寧に拭い、いったん新しいタオルに変える。



彼の精悍さを増長させていた広い肩。今ではすっかり筋肉が落ちて、痛々しい。

分厚かった胸板は、あばら骨がすけて見えるほど胸筋が落ちている。

…傷跡の皮膚は、きっと薄くなっているはずだ。
摩擦で傷つけないように、そっと押し当てるように拭いていく。


何度も新しい蒸しタオルに変えながら、丁寧に上から下へ拭いていった。













腰骨が透ける大腿部まで来た時、ふと刹那は困ってしまった。


カプセルの中に居る時は、排泄はすべてカプセルが処理していた。
排泄後のウォシュレット機能までついていたので、刹那は全く気にとめたことがなかった。





病服を脱がせた時からなるべく見ないようにしていた茂みにそっと手を伸ばす。

彼の髪と同じ色の艶やかな陰毛。
その中から出ている長くて大きな陰茎。


「……やっぱり、デカいな。」


刹那はボソッと呟いた。






トレミーにいた頃、初めて見た時はついつい羨望の眼差しでガン見したものだ。







「………ここも……、拭くべきだよな。」

恐る恐るそれを手に取る。

カプセルのウォシュレット機能のおかげで、清潔だったが、

「……体中を拭いて、ここだけ拭かない訳にはいかないしな。」

なんとなく後ろめたくて、つい言い訳がましい独り言をもらしてしまった。

もちろん、ロックオンは聞いていなかったが。







余計な刺激を与えないように、そっと拭いていく。

反応させること無く無事に拭き終わった時には、ほっと息を吐いてしまった。









さらに、白い内股や痩せた尻も丁寧に拭いた。


いったん体を返して、背中を拭く。


足の指の間まで全て丁寧に拭き終わるまでに、30分もかかってしまった。

新品のバスローブを着せて、一息吐く。






「やっぱりあんた、でか過ぎだ。」


茶髪を指で梳きながら、刹那は語りかける。


「追いつける気がしない。」


筋肉が落ちて細くなったせいか、脚がさらに長く見える。


「どんなに痩せても、あんたは格好いいな。」


刹那はその上半身を優しく抱き上げた。


「それに、どんな傷跡が残っても、あんたは綺麗だ。」


未だ碧翠を隠し続ける目蓋にキスを落とした、その時、ピクリと彼の指が動いた気がした。


「ロックオンッ!!?」


慌てて彼の顔を覗き込んだが、彼の意識は戻ってはいなかった。







反応があった嬉しさと目覚めなかった落胆が、刹那の心を掻き乱す。


「………もうすぐ、あんた起きるよな?」


ぎゅっとその体を抱きしめる。


「あと少しくらいなら、寝ていてもいいから………、なるべく早く目を覚ましてくれ。」


彼の体を抱き上げて、治療を続ける為にカプセルに戻した。

再び、ロックオンと刹那はガラスケースに隔てられてしまった。



「いつまでも、俺は待つから。」


刹那はガラスに額を押し当てた。



「だから、絶対、絶対、目を覚ましてくれ。」












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