人の気配の無くなった医薬品保管庫。




俺はそっと物陰から出て、暗闇に目が慣れるのを待つ。

室内の監視カメラは改ざん済みだが、大きな物音をたてると廊下にいる人にバレる可能性がある。









しばらく目が暗闇に慣れるのを待ってから室内を確認すると、俺の調査通りたくさんの医薬品が保管されていた。


古くなって使われていない医療用カプセルも保管されている。

カラの運搬用ワゴンも数台ある。






俺は、点滴パックの棚から高価で高カロリーなものを選び出した。

3ヶ月分もあれば十分だろうか。








ついで、点滴用の注射針、消毒液、ガーゼ、包帯、軟膏、ビタミン剤、その他ロックオンの治療に必要そうなものを思い付く限り選び出した。


十分な数量を揃えて、持って来た袋に丁寧に梱包していく。














次いで、古くなって使われていない医療用カプセルを調べる。

無造作に並べられたボロボロのカプセルが数種類。



俺はズボンのポケットから、事務室から持ち出したカタログを取り出した。


今回導入される最新式の医療用カプセルのカタログだ。
サイズや諸機能などの詳しい説明が載っている。

カタログと見比べながら同じくらいの形、大きさのものを1台選び出す。





俺は食料のりんごの他に塗装用のラッカーと新品の寝台シート、それから偽造したいろいろなもの持ってきている。







まず、放置されている別のカプセル数台から部品をもぎ取り、選び出した1台にカタログに記載されている諸機能に似せて装着する。



次に、そのカプセルの外側をカタログ最新式と同じカラーに塗装していく。

こういう作業はMSの整備で慣れている。

カレルにエクシアを任せっきりにするのが不安で、いつも手作業で塗装していたからだ。






ラッカーのシンナー臭が多少気になる。

だが、この保管庫は湿度を防ぐために強力な換気システムが備わっていたため、すぐに新鮮な空気を吸うことが出来た。









塗装が乾くのを待ってから、古い染みだらけの寝台シートを剥ぎ取り、持ってきた新品のシートと交換する。

カプセルの古いガラスもピカピカに磨き上げた。



最後に、あらかじめ偽造しておいたメーカーのネームを、カタログの写真通りに貼り付けた。










最新式医療用カプセルのイミテーションの完成だ。




実際の機能はさっぱりだろうが、見た目はカタログ通りの見栄えだ。



これを、本物の最新式とすり替える。
本物のほうはロックオンのために頂戴する予定だ。





俺はりんごで一服しながら、出来上がったイミテーションを眺める。



なかなかの出来栄えだ。

ガラス表面に多少の傷があるが、梱包材に包まれている上からなら気付く奴はいないだろう。







ファーストミッション終了。

現在、2205。

ミッションを開始してから4時間30分が経過している。


とりあえず、今のところは順調だ。









りんごを咀嚼しながら、病院中にしかけた盗聴器のデータを確認する。



ロックオンの病室では、看護士が、意識回復者が1人もいないことを報告していた。

ケチで卑しい医師が、再びえげつない会話を繰り広げていた。








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