窓一つない保管庫には、朝の光は届かない。 俺は、自分の端末で時刻を気にしながら仮眠を取った。 昨夜散らかしたラッカーの汚れは、保管庫にあったアルコール度数99%の消毒液とガーゼで綺麗に拭き取っておいた。 製作した“最新式もどき”は、納品する際の梱包材で丁寧に包装して、これまた偽造しておいた納品リストを貼り付けた。 そして目立たないように布をかけて部屋の隅に安置している。 点滴パックやその他選び出した薬品類を入れた袋を部屋の一番目立たないところに隠し、自分自身も身を潜める。 時刻は0515。 そろそろセカンドミッションが始まる頃だ。 扉の向こうで人々が忙しそうに行き交う気配がする。 病院の朝は、静かではない。 夜勤明けの医師、入院食を配るスタッフ、早朝から不都合を訴える患者たちで、ちょっとした喧騒が起きる。 俺の調査では、夜勤のスタッフが少しずつ交代のし始める頃だ。 そろそろ、夜勤を終える前の疲れきったスタッフが薬品のストックを取りに来るはずだ。 俺のセカンドミッションは、ただじっと隠れること。 早朝で出入りの激しくなる保管庫内で、息をころして身を潜め続けること、これだけだ。 今、こんなところで見つかってしまえば、俺は確実に逮捕されるだろう。 「子どものイタズラ」ではすまされない。 ロックオンのために最新式の医療用カプセルを奪取することも出来ない。 3重のパスワードが入力されて保管庫のロックが解除される音が響く。 早朝の淡い日光が、部屋にすっと差し込む。 一晩中暗闇の中にいた俺にとっては眩しすぎる光だ。 視覚に頼るのは極めて危険だ。 保管庫の扉が大きく開いて、廊下の雑音と共に複数の足音が入って来た。 俺の静かな闘いが始まった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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