医師たちは応接室で検証データをチェックするのだろう。 メーカーの担当者と会話しながら、保管庫を出ていった。 俺も検証データやカプセルの性能は詳しく知りたいが、今はそんなことを気にしている時ではない。 全てが終わってから事務室のサーバーにアクセスすれば、情報は手に入るだろう。 運搬業者たちも撤収するようだ。 １人がカートを１台ずつ押して、保管庫をあとにする。 現在時刻、0925。 サードミッション、スタート。 業者の最後の１人が保管庫を出ようとした時、俺は物陰から忍び出てその男の後頭部の急所を突いた。 男は声も立てずに気絶した。 俺は部屋の内側からパスワードでロックをかけて、一旦ドアを閉め切る。 気絶した男を保管庫の奥へ引きずり込んで、男の作業服を剥ぎ取る。 そして剥ぎ取った作業服を、俺の服の上からすっぽりと着た。 男が小柄だが恰幅がいいせいか、作業服は俺には少しブカブカだ。 だが、業者の帽子を目深にかぶっていればバレにくいだろう。 次に、一台の最新式の梱包材を剥がす。 まず、諸機能の確認だ。 カタログとメーカーの人の発言が、間違っていないかどうか点検する。 バッテリーが満タンなのもチェックした。 メーカーの人が言っていた 対Ｇセンサーは、エクシアに装備していたものに似ている。 宇宙船対応型、と言うのにも頷ける。 本当は手術モードも作動させてみたかったが、今はそんな暇はない。 昨日使ったラッカーの残りで最新式に付いているメーカーのロゴを塗り消す。 カプセルの塗装の表面に、保管庫から拝借したメスで細かい傷を付ける。 カプセルのガラス蓋を埃だらけのガーゼで拭く。 ぱっと見ると、オンボロな旧式カプセル、そのものだ。 そのカプセル内に、昨夜集めた点滴パックや治療器具や医薬品の入った袋を積み込んだ。 さらに、カモフラージュのために古い梱包材を粗雑に被せる。 それから俺は、昨夜改造した“最新式もどき”を新しい梱包材で丁寧に包んだ。 それを、カモフラージュした本物の最新式と並べ替える。 これで、保管庫に訪れる人が見ても、すぐにはバレないはずだ。 誰が見ても最新式が５台並んでいるように見える。 どうせ実際に導入するまで数日間ここで保管するのだろう。 これで完成だ。 出来上がった“旧式もどき”をカートに乗せる。 俺が服を剥がした男は、まだ気絶したままだ。 少なくとも今日一日中は気絶していて貰わないと、計画に支障をきたす。 俺は男に保管庫にあった睡眠薬を少し多めに投与した。 そのまま、男を今朝俺が潜んでいた物陰に安置する。 この男に罪はない。 「すまないな。」 が、これもロックオンのためだ。 俺は、下着姿の哀れな男にそこら辺にあったシーツをかけてやった。 それから俺は、数日前ハックしておいたセキュリティーシステムのサーバーに、ある細工を施す。 クリスから伝授された技術の中でも、一番難しいトリックを何重にも施した。 俺は、パスワードを入力して扉を開錠し、カートを運び出した。 そして、一晩過ごした保管庫をあとにした。 0955。 フォースミッション、スタートだ。 ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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