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俺はロックオンと最新式カプセルを乗せたカートを押して病室の扉を開けた。



細い通路には相変わらず人の気配はない。

俺はそのままカートを押し進んで広い通路に出た。


しかし、広い通路は数分前とは全く違う雰囲気を漂わせていた。


セキュリティーの管理室から医療スタッフに連絡がまわったのだろうか、
厳戒態勢を敷いているのがビリビリと伝わってくる。



それにしても、対応が早すぎる。
ここのセキュリティの管理者を侮り過ぎたのかもしれない。





俺は怪しまれないように自然に進んだ。

それでも何人かの医療スタッフから不審そうな視線を送られる。


俺は、運搬用エレベーターの前でカートを止め、エレベーターのボタンを押す。




セキュリティのチェックが始まる前に、一階までエレベーターで降りて廃棄物運搬出入り口から脱出しなければならない。




エレベーターが到着するのがやたらと遅く感じた。






唐突に、医師の一人が俺に話しかけてきた。


「君、そのカプセルは?」


内心動揺しながらも平静さを保つ。


「スクラップです。運び出すよう指示されました。」

「今から運び出すのかね?」

「ええ。………何かあったんですか?何だか騒がしいですけど……。」

俺は呑気そうに会話しながら、何も知らない業者を振る舞った。
もちろん、帽子は目深にかぶっている。


医師をうまく騙せただろうか……。


「さっき、セキュリティから連絡が入ってね、何かアクシデントがあったらしい。
今、1階では厳重な検査が始まっているそうだよ。」

「業者用出口もですか?」

「そうだろうね。」

「それは困りますね……。僕、他にも指示されたものがあって、急いでいるんですよ。」







他にやることは無いが、困っているのは事実だ。




「ドクター、ちょっといいですか?」

俺が悩んでいると、一人の看護士が、俺と会話していた医師に話しかけてきた。

「どうした?」

「空軍の諜部がウチに抜き打ち監査に来ているそうですよ。」

「諜部が?なぜ病院に?」

「人革連のスパイがコロニー内に潜伏しているって噂ですよ。コロニー中を捜査して廻ってます。」

「セキュリティにアクシデントがあったから、まずウチから捜査するって訳か。」

「ええ、そうみたいですね。」






まさかこんな時に、人革連のスパイ騒ぎがあるなんて。
全くツイテない。


まずい。
非常にまず過ぎる。


俺は穏便に1階から脱出して、数日間はコロニー内に潜伏する予定だったのだが。




こうなったら、アレに頼るしかない……!!



「あの……、1階が大変そうなので、僕、先にもう一つのほうも回収してきますね。」


エレベーターがようやく到着した。

俺がカートを運び入れる間、医師はエレベーターの▲のボタンを押してくれていた。



「何階かね?」



病院の見取り図はすべて頭に入っている。

「15階です。」

俺は即座に答えた。












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