エレベーターの扉がしまると俺はすぐに端末を取り出した。 そして、エクシアの声紋作動システムにアクセスする。 「プライオリティを刹那・F・セイエイに譲渡。」 ロックオンの寝ているカプセルと共に、15階まで上がる。 「外部迷彩被膜を実行状態のまま、ユニオン第5コロニー内部のポイントF18へオートで移動。」 エレベーターが15階に到着した。 カートを慎重に運び出す。 「高度60mで空中待機。」 運搬用エレベーターから屋上までは少し距離がある。 屋上の出入り口までは長い廊下を進むしかない。 カートを押して進んでいると、怪しく思った看護士が声をかけてきた。 「ちょっとあなた、そのカプセルをどこへ持っていくの?」 「屋上へ運び出すようにと指示を受けました。」 「まぁ、誰から?」 「メーカーからです。急いでいますので………。」 看護士がセキュリティに連絡し始めたが、言い訳をしている場合ではない。 人革連のスパイだと誤解されるのは心外だが、スパイであることに変わりはない。 空軍の捜査に捕まれば、ロックオンも俺も終わりだ。 今は強行突破しかない。 俺は、カートを押して走り出した。 後ろから看護士たちが追って来る。 なんとしても逃げきらねば!! 生身なら逃げ切る自信があるが、今の俺はそこそこ重さのあるカートを押している。 看護士達がみるみるうちに追い付いて来た。 まずい!!! 絶体絶命のピンチだ。 ふと、俺は煙を感じた。 廊下の窓辺で1人の患者が喫煙している。 副流煙が風にのって俺の鼻をくすぐる。 …………、これだ!!! 俺は、肩に担いだ点滴や医療器具の袋から、消毒液の小瓶を取り出した。 エタノールはアルコール度数99%だ。 瓶のキャップを開けて、廊下のカーテンにぶちまける。 そして、喫煙している患者の煙草を取り上げて、カーテンに放った。 途端に燃え上がる炎。 追い付きかけた看護士たちの高い悲鳴が廊下に響く。 何だ何だと患者が野次馬して群がって来る。 俺は混乱に乗じて、どうにか屋上に到着した。 「外部迷彩被膜、解凍。」 突然頭上にエクシアが現れる。 「高度を下方に15m調整しつつ、コックピットハッチオープン。」 ちょうどコックピットハッチが屋上の床の高さにくるように、エクシアを下降させた。 俺はまず、コックピットの後ろのスペースにロックオンの寝ているカプセルを安置した。 と、その時。 警備員とユニオン空軍の制服を着た男が数名屋上に走り出て来た。 「見つけたぞ!人革のスパイめー!!」 奴らは一瞬、モビルスーツに動揺したが、すぐに発砲してきた。 俺は急いでコックピットハッチを閉めるが、間に合わない。 銃弾がこちらに飛んでくる。 しまった! このままではロックオンのカプセルに当たる………!!! 俺はとっさに体をロックオンのカプセルに覆い被せた。 肩に激痛がはしる。 銃弾は俺の肩を掠めて座席のシートにめり込んで止まった。 直後、ようやくハッチが閉まった。 鈍く痛む肩を無視してエクシアを作動させる。 「エクシア、刹那・F・セイエイ、脱出する!!」 そして俺は、ロックオンを救出してコロニーをあとにした。 第三章 脱出 END NEXT→あとがき <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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