「ロックオン、今から120分間、再生治療を受けてくれ。」

ロックオンの身体を覆う毛布をそっとはがす。


「適温に設定はしているが、カプセル内にも作動パネルがある。熱かったら自分で調節してくれ。」


昨晩のように軽々と抱き上げられて、医療用カプセルの寝台にそっと横たえられる。


「もし何かあったら、俺の端末に連絡してくれ。」

「刹那、出かけるのか?」

「ああ。治療が終わる頃には戻る。」

手短にそう告げると、刹那は端末と上着だけをつかんだ。


「ロックオン、行ってくる。」

カプセルに寝かされた彼に啄むようなキスをすると、ガラスのケースを閉めて刹那は寝室を出ていった。







「………あいつ、いつの間にこんなこと覚えたんだ……?。」

あまりにも自然な、流れるようなキス。

ロックオンは細胞活性装置のレーザーを浴びながら、そっと自分の唇に触れた。








―――刹那はあれから4ヶ月経ったと言ったが、実感はない。

ただ、深い深い海の底から一筋の光が差すのを待っていた……、とても長い間そんな感覚を味わっていた、……ような気がする。

この4ヶ月間、刹那はどれだけの悲嘆と苦痛を嘗めてきたのだろう。


寝たきりだった俺が痩せるのは仕方ない。

だが、刹那は心なしかゲッソリしている気がする。
以前にも増して細くなった。
ろくに栄養を摂っていないのか、単に疲労が重なったのか…、頬の丸みが取れ、幼さが消えた。
血色もあまり良くない。


だが顔立ちとは裏腹に、表情はとても柔らかくなった。

俺が刹那に銃を向けた時に見せた、あの微笑みを終始俺に見せてくれる。

小さかった背中が、妙に大きくガッシリとして見える。

まだ幼い可愛らしいしぐさは健在だが、精神的な弱さや稚拙さが消えた気がする……。




……苦労、かけたんだな……。

目蓋にレーザーが移動してきて、ロックオンは目を閉じた。







ソレスタルビーイングは王留美が掌握している、と刹那は言っていた。

世界はまだ緩やかに動き始めたばかりだ。



今の自分に出来ることは、少しでも早く回復すること。

早く立てるように、戦えるようになって、たくさん苦労をかけた刹那に目一杯甘えてもらえるようになること。


身体中がむず痒くなり、皮膚や臓器が活性しているのが分かる。
ロックオンは、効率の良い治療のために、と意識を手放した。









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