――ブロロロロロ…、キイッ。…


屋外に大型車の停まる気配がして、ロックオンは目を覚ました。

カプセルのパネルを見ると、刹那が出て行ってから3時間経っていた。
再生治療はとっくに終わっていたらしい。




……バンッ、バンッ。

車のドアが閉まる音が響く。
足音から、複数、おそらく4、5人の男性がこの家に近づいていると判断した。



不審に思ったロックオンは、銃を目敏く探したが、見あたらない。

第一、自分で起き上がることすら出来ないのだ。
武器を見つけたところで、立つことも銃を固定することもトリガーを引くこともできないだろう。




完全に衰えた全身の筋肉。
命があっただけでもめっけもん、と必死で自分に言い聞かせながら、カプセルの中で息をひそめる。

じっと耳をすませていると、数人の男の声に混じって刹那の声がした。






カチ、キィィ……。


玄関が解錠され、ドアが開く気配がする。


「入ってくれ。」

刹那の声がはっきりと聞こえた。


「失礼しまーす。」

聞き覚えのない複数の男性の声。

ドヤドヤガチャガチャと足音や器具を運び込む音がする。








トントントンと軽やかな足音が寝室に近づいてくる。

聞き間違えるはずのない、刹那の足音。





静かにドアが開き、刹那が顔を覗かせた。


「お帰り、刹那。」

「……ロックオン、………ただいま。起きていたのか?」

刹那がカプセルの蓋をいったん開ける。

「遅くなってすまない。」

「いや、俺も今起きたところだ。……それより刹那、誰を連れてきたんだ?」

「現地の作業員だ。家の改装を依頼した。」

「……改装…?」

「それより、ロックオン。」


ガシャン、と刹那が部屋に何かを運び込む。

「………車椅子…?」

「そう、電動車椅子だ。レンタルしてきた。乗ってみるか?」

「……ああ…。」







刹那に抱き起こされ、慎重に車椅子に座らされる。
頭まである柔らかな背もたれ。
ゆったりと安定した座り心地だ。


「姿勢、キツくないか?」

刹那は、ロックオンの腰に薄いクッションをあてがう。


「ああ、全然余裕だ。悪いな、何から何まで手配させて…」

「ずっと同じ寝室に居たのでは息がつまると思ったから……。」

柔らかく微笑む刹那。

「リハビリして立てるようになるまでは、これを使ってくれ。」



……ああ、そうだ。

ロックオンは刹那を見上げる。

……先ほど刹那に感じた違和感。俺は、刹那の成長に戸惑っていたんだ……。








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