トレミーに居た頃の刹那は、自他ともに認めるガンダムバカ。

強くなりたい、世界の歪みを正したい、その為になら何だってする。

その強い意志を全面に出して、まっすぐ前を向いている勇敢な戦士だった……。















刹那が呼んだ業者は、2時間ほど作業をしてから撤収して行った。


「ロックオン、何かしたいことはあるか?」

業者を送り出した刹那が寝室に戻ってきた。


「そうだな……。家の中、見てみたい。」

「分かった。案内する。」

刹那が車椅子を押して寝室から出る。








寝室を出るとすぐに、明るいリビングが広がっていた。

さんさんと日の光が差し込む大きな窓。
落ち着いた緑色のカーテンがわずかに揺れる。


「……良い、部屋だな。」

「本当か?」

「ああ、……故郷の実家を思い出すよ。」





木目調の室内には、世話の行き届いたみずみずしい観葉植物が置かれていた。

「ありがとう、刹那。」

車椅子を押す刹那の小さな手に自分のを重ねる。

「すごく、俺好みの家だ。」

「……あんたが昔話してくれたのを思い出して準備したんだ。」

刹那が照れくさそうにぼそぼそと応える。






可愛らしい緑色のチェック柄のテーブルクロスの上には、コップに無造作に生けられた白い花束があった。


「これ、刹那が自分で生けたのか?」

「……ああ、エクシアを隠している近くに咲いていたんだ。」

刹那が花を飾るなんて……、クリスが聞いたらびっくりするだろうな、と思うと自然に笑みがこぼれる。


「………何か、変だったか?」

刹那にも、慣れないことをした、という自覚はあるようだ。


「いや、刹那は変わったな、と思って。」

「……変わった?…俺が?」

「ああ。刹那はすごく変わったよ。前よりもずっと大きくなった。」

コップから野菊を一輪取って、刹那の頭にさす。



「……俺、大きくなったのか?」

「ああ。すごく成長した。」

「……そうか。」

刹那も花が開いたように笑った。





「……刹那に比べて、俺は全然成長できていないな。」

「ロックオンは十分デカイじゃないか。」

刹那は訝しげに首をかしげる。

「ハハハ、成長って言うのは身体じゃなくて……」

笑いながらロックオンは刹那の胸をトンッと指した。

「……ここの事だ、内面的なところだ。」




ロックオンの髪が日射しに透けて、キャラメル色に輝いた。

「俺は成長できなかった……。ずっと家族の仇を討つ事しか考えられなかった……。」


自嘲気味に微笑む。


「刹那、お前は変われ。……俺の代わりに、変わってくれ…。」





「あんたもだ。」

刹那の強い紅玉が、ロックオンの不自然な笑顔を射抜いた。

「あんたも、まだ変われる……。今から変わらなくてどうする。」

「……せつな…、」

「あんたは一度死にかけて、生き返ったんだ。せっかく取りとめた命だ。今から成長すれば、それでいい。」

刹那は、ロックオンの痩せた大きな手をぎゅっと握りしめた。


「…せつ………………、っ。」

刹那の強い想いが触れ合った手から流れ込む。
ロックオンは胸につかえて、もう何も言うことができなかった。










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