ロックオンが新しいカプセルに入ってから10日。 最新型の性能のおかげで、ロックオンの体の傷跡はだいぶ良くなりかけていた。 なのに、彼の意識は一度たりとも回復しなかった。 刹那はなるべくロックオンのそばに居た。 早朝に起きて、カプセルの昨晩のデータをチェックする。 意識が少しでも回復すれば、アラームが鳴るように設定はしているのだが、もしかしたら自分が気づかなかったかもしれない…。 ついつい期待してチェックするのだが、一度も彼の意識には変動は無かった。 昼間、どうしても外出しなければならない時には、いつも端末でカプセルにアクセスしていた。 エクシアの点検をしている時も、食料品や彼の新しいバスローブを買いに行っている時も、彼のことが気になって仕方なかった。 夜寝るときも、備え付けのシングルベッドをカプセルの隣まで引きずってきて、寄り添うように寝た。 夜中には何度も起きて、彼の顔を覗き込んだ。 ロックオンは、深く眠り続けていた。 新居に入居して9日が過ぎた。 ロックオンが新型のカプセルに入って10日目。 刹那は二回目の診察をした。 彼をカプセルから出してマットレスに横たえ、バスローブを脱がす。 大きな傷跡はまだ薄く残っていた。白い肌を蒸しタオルで拭きながら、改めて爆発の被害の大きさを思い知る。 だが、体中にあった小さな火傷の跡やかさぶたは、もうほとんど取れて見えなくなっていた。 …やはり、最新型は凄い。 苦労して手に入れた甲斐があった、と思いながら、ロックオンの体をすみずみまで拭いていった。 ……もし、神が居るのなら、 ――まだ幼かったあの日に否定した神とは別の神だろうが―― …それでも、このたくましい生命力、そして医療技術に注がれた叡知。 これらを人間に与えた神が存在するのなら……、 「…ロックオン、この世界も悪くないのかもしれない。」 傷痕が薄くなった右の瞼にそっと触れる。 「早く目を開けろ、ロックオン。俺には、俺たちにはまだやることが残されているから。」 彼の伏せられた長いまつげの毛先を、そろりそろりと指の腹でなぞる。 彼はピクリとも反応しない。 「あんたが寝ているうちに、俺が先に世界を変えてしまったらどうするんだ。」 彼の前髪を手ですきながら問いかける。細く柔らかい毛束がと指に馴染み、サラサラとこぼれていった。 刹那は、ロックオンの白い額にキスを落とした。 おはよう、という度に彼がしてくれていたのと同じように。 「あんただって、世界を変えたいんだろ。」 ――お前もガンダムに乗って、世界を変えたいんだろ?―― 「そもそも、あんたが先に言い出したことだ。」 ――俺もだよ、刹那――。 「だから、責任をとって、早く目を醒ましてくれ、ロックオン。」 返事は無い。 まだ夕方には早すぎると言うのに、既に日は傾き始めていた。 その日、刹那がどんなに触っても、ロックオンはピクリとも反応しなかった。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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