ロックオンは順調に回復してきている。 まだ激しい運動は出来ないが、ゆっくりと歩くことは出来るようになった。 日常生活において介助が必要ではなくなったので、刹那は日中家を空けることが多くなった。 行き先は南関東から100kmほど離れたところにある経済特区東京。 新設される連邦政府の支部もあるため、様々な情報が得られる。 世界情勢の裏の動向と、反政府組織として祭り上げられている幾つかの組織、とりわけソレスタルビーイングについての情報を入手する。 これが刹那の目的だった。 ロックオンには余計な心配をかけたくはなかったので、刹那は自分の潜入調査についてはあまり話さなかった。 ロックオンも、刹那の行動には気が付いているのだろうが、深く追及することはない。 ただ、朝出かける時はいつも、 「あんまり、無茶すんなよ。」 と言ってストールを巻き直してくれる。 春の天候は気まぐれだ。 昨日は真夏並みに暑かったと思えば、今日は凍えるような寒さだ。 吐いた息が白い。 さらに、ラジオの天気予報によると、午後遅くからはどしゃ降りだそうだ。 日本ではこのごろの天候を『三寒四温』、春の嵐のことを『春荒』と呼ぶ、とアナウンサーが言っていた。 軍の施設を車で幾つかまわって、家に帰りついたのは夕方だった。 フロントガラスにポツリと水滴が落ちてきたかと思うと、あっという間にザアザアと叩きつけるように雨が降りだした。 庭に車を停め、玄関まで走る。 軒先で服に付いた水滴を払っていて、不審に思った。 普段なら車のエンジン音に気付いて、 「お帰り。」 とドアを開けてくれるはずなのだが、今日はロックオンが出てこない。 おかしい。 何かあったのでは?と思い、耳をすませてみると、 ――パシュッ、パシュッ、パシュ、 空気を切るような音が雨音に混じって断続的に聞こえる。 一体屋内で何をしているのだろう……。 刹那は窓からそっと覗いてみた。 ロックオンは、銃を構えていた。 一瞬刹那は驚いたが、落ち着いて見てみると、弾をいれずに空砲だけで狙撃の練習をしていた。 片膝をつき、銃の背にコインをのせ、引きがねを引く。 そのスタイルにはよく見覚えがあった。 なぜなら昔、刹那自身さんざん訓練でやってきたことだったから。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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