4.







ロックオンが取りやすいように、ベッドサイドには低い本棚がある。

地震大国日本に住んでいるのだから と、刹那がわざわざ低いものを買ってきたのだ。

木目調のそれには、古本屋で揃えた推理小説がズラリと並んでいる。

他にも、ロックオンの好きな19世紀の小説や哲学書が少しずつ増やされていった。








布団から這い出した刹那は、本棚から一冊の薄い冊子を抜き取った。

四つ這いでキングサイズのベッドを移動して、ロックオンの足元に座り込む。


「…………刹那?」

「まだ眠いのなら、ロックオンは寝ていてくれて構わない。」

「いや、眠くはないけど……、何するんだ?刹那。」



刹那は掛け布団を少しだけ捲ると、ロックオンの足を取り出した。



「ロックオン、今日からリハビリを始めるぞ。」

「リハビリ?」

「そうだ。最初は1日に少しずつでいい、毎日続けることが大切だと、この本に書いてある。」


『ビギナーのためのリハビリ』というタイトルの冊子。

刹那はパラパラとページをめくり、目当ての項目を開く。


「足の筋肉が衰弱している時は、無理にリハビリをすると筋を痛めやすいらしい。」

「へー、そうなのか。」

「だからこうやって、」

刹那は俺の足を持ち上げ、自分の太ももに乗せた。

「足首の筋をほぐすことから始めるのだそうだ。」

冊子の図解を見ながら、ロックオンの足をゆっくりと回す。

こわばっていたアキレス腱が伸ばされると、結構気持ちいい。

両足交互に丁寧なマッサージを施される。


「ロックオン、痛くはないか?」

「全然!ありがとな、刹那。」

にっこりと笑いかけると、刹那は照れくさそうに目線を冊子にそらす。

「次は足の裏だ。」




つま先を掴むと、グッと内側に曲げられる。

「ロックオン、痛かったらすぐに言ってくれ。」

「りょーかい。」

全く使っていない土踏まずや小指の付け根などをやんわりと刺激され、少しずつ筋が伸びてくるのが分かる。

グイッと左足の指を上に曲げられた時、

「っう………!?」

こわばっていた土踏まずの筋がピキーンとつってしまった。


「ロックオンッ、大丈夫か!?」

「……っつぅー、平気平気。ちょっと足の裏がつっただけだ。」

「待ってろ、すぐにほぐしてやる。」

両手で懸命に揉みほぐしてくれる愛し子。

足の裏がつって痛いし、衰弱しきった両足が情けない。

だけど、こんなに甲斐甲斐しく刹那が介護してくれるんなら悪くないな、と つい思ってしまう。


「刹那、もう大丈夫だ。すまないな。」

「構わない。……急にやり過ぎるのは無理があるな。」

朝食を作ってくる、とベッドから降りた刹那。

水色のエプロンを身に付け颯爽と寝室を出ていく姿は、新妻そのものだった。






決して理想的な状態ではないけれど、満ち足りた生活。

それもこれも、刹那がケアしてくれるからだ。

今の自分は刹那に依存しきっている。

刹那に何かを返すことは出来ない。

だが、刹那を喜ばせることなら出来るはずだ。


「……いきなり俺が歩けたら、刹那びっくりするかな。」

刹那が置いていったリハビリの本を読みながら 秘密の特訓をしよう とロックオンは意気込んだ。







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