「カマル君、今日もお父さんのお見舞い?」

「あ、はい。」

「あら、今日の差し入れはお花じゃないのね。」

見知り合いになった看護士が俺の持つ紙袋を指差す。


「ええ、母が、りんごをお父さんに食べさせてあげて、って持たせてくれました。」







嘘だ。
これは俺の食糧だ。

プラン通りに遂行するなら、俺は今から18時間以上この病院に滞在することになる。

腹が減っては戦は出来ない。






「カマル君、1人で皮剥ける?お姉さんが手伝ってあげよっか。」

「ありがとうございます。でも、料理は家でよくしているので大丈夫です。」

「まぁ、本当に偉いわね。何か困ったことあったら、いつでも言ってね。」

「はい、ありがとうございます。」







疑似人格タイプR21。
性格の良い優等生キャラだ。

R35とは違い、なかなか気に入っていたが、もうする必要は無いだろう。














ロックオンを発見してからの3日間。

俺は、この病院を徹底的に調べあげた。


ロックオンを出来るだけ早期に、だが確実に安全に救出するためだ。








医師や医療スタッフの勤務状態、清掃員の作業ルート、この病院に納品している製薬会社の担当者リストと運搬手段、医薬品の保管場所……。


警備室にハックをかけて、全ての監視カメラとセキュリティーシステムも掌握した。



以前クリスが意気揚々と、

「実動部隊も簡単なハッキング技術くらいは知っておいてね」

と、言いながら難易度Aの技術を叩き込んでくれたのが役にたった。









事務室のサーバーにハックをかけて、近日中に訪問予定のある病院関係者を調べていると、かなり大きなカネが動くことが分かった。


4日後の午前に、最新式の高価な医療用カプセルが5台だけ納品されるらしい。






このチャンスを活用しない手はない。












俺は、綿密なプランをたてた。

あと0030でミッションを開始する。






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