グリモア オブ アルビノ(小説館)

アルビノ  〜albino〜
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「アルビノ」
        


2050年―――
2011年度に太平洋側から日本を襲った大地震と、それによって引き起こされた大津波によって壊滅的な打撃を受けた日本は、一向に回復の兆しも無く、破滅への道を辿っていた。
そんな時、ある日の国会に見知らぬ男の姿があった。
その姿は議員のそれとは程遠く、国事を定める法の場においても帽子を深く被ったまま、外そうともしない。
髪や肌は雪のように白く、瞳は薔薇のように紅い。
これだけ目立つ姿にも関わらず、誰もその姿には気付いていないようだった。
今回の議会も、特に進展が無いまま終わりの空気を出し始めたその時、帽子の男がツカツカと前へ出て行った。
その数秒後、男はこう言い放ったのだ。
「皆様、私共の『金融党』に、この国の未来を委ねてみませんか?」
場の空気は一瞬にして静まり返ったが、やがて全体がざわつきだした。
やがて議員の一人が立ち上がり、言った。
「それはどういった意味ですか?それと、金融党などという党名は聞いた覚えがないのですが、差し支えなければ説明していただけますか?」
帽子の男はニヤリと不気味に笑い、「いいですよ、ええ。説明しますとも。」と言い、左手をかざすと、背後に巨大な映像ディスプレイが浮かび上がってきた。
「はい、画面左上を参照。私共金融党はその昔、『日本銀行』と呼ばれ、国内全体の紙幣及び貨幣を製造、管理及び調整を行っていた企業で、その名の通り、『ある条件』と引き換えにお金をお貸ししているのです。」
「では、先程の話になりますが、あなた方金融党にこの国の未来を委ねる、というのはどういった意味です?」
すると帽子の男は両手を重ね合わせ、身を前に乗り出し、返答した。
「簡単な事ですよ。つまりは・・・」
そう言いながら今度は右手をかざすと、堂内に黒スーツの男たちがぞろぞろと入り込み、銃を構えた。
そして男は言った。
「・・・我々にこの国を渡せ、と言っているのですよ。」
「貴様っ!独裁者か!!」
議員の一人が銃を取り出し、帽子の男に銃口を向け、引き金を引いた。
その銃弾は男の右腕を貫いた。
・・・が、男はピクリとも動かなかった。
「先天性無痛無汗症、という病気をご存じですか?」
銃を構える議員の元に歩み寄り、その銃口を自らの肩に当て、不気味に笑い、言った。
「私はね、生まれながらにして汗もかかない。オマケに痛みも全く感じないのですよ。そら、その引き金を引いてみてくださいよ。・・・どうしました?もしかして、怖気付いて引き金を引けないとか?・・・ククク、とんだフヌケじゃありませんか・・・!」
「はい、サヨウナラ〜♪」と言いつつ指をパチンと鳴らすと、黒スーツの男たちがその議員に銃口を向け、一斉に引き金を引いた。
帽子の男はそれを見ながら気味の悪い笑いを浮かべて目を閉じた。
かくして日本経済は帽子の男が率いる金融党に握られてしまったのだった。

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